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2010 年度 実績報告書

イギリス19世紀末の方法論争

研究課題

研究課題/領域番号 20530166
研究機関北海道大学

研究代表者

佐々木 憲介  北海道大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (50178646)

キーワード方法論争 / イギリス歴史学派 / J.S.ミル / 帰納法
研究概要

本研究計画は,理論派と歴史派との間に起こったイギリス19世紀末の経済学方法論争について,その経済学史上の意義を明らかにしようとするものである。平成21年度は,とくに歴史学派における帰納法の意味について研究した。それを明らかにするために,J.S.ミルと歴史学派とを比較する接近法を採用した。古典派を代表する経済学者の一人であったJ.S.ミルは,古典派の方法論的立場を堅持しつつ,歴史学派の観点を先取りする議論をも展開していた。ミルは,すでに歴史的方法について語っていたし,それ以外にも歴史学派のものとされる主張を展開していたのである。ミルは,経済学に相応しい方法は,帰納-論証-検証の三段階からなる直接的演繹法であると主張した。これらの三段階のうち,狭い意味での演繹に当たるのは第二段階だけであり,第一段階と第三段階においては,帰納法が用いられるとされた。ミルは直接的演繹法の第一段階を帰納としていたが,そのときの帰納の意味は,歴史学派のレズリーなどが考えるものとは違っていた。つまり,ミルの場合には,与えられた事実をその要素に分解し,その要素間の因果関係を明らかにすることが,第一段階の帰納の意味であった。これに対してレズリーは,与えられたままの複雑な事実を対象として現象間の因果関係を解明することを,第一段階の帰納の手続きと考えていた。両者は,同じ帰納という言葉を用いながら,別の手続きを思い描いていたのである。与えられた事実から一般化される経験的法則には多くの例外が伴うため,一般化の手続きはきわめて困難なものとなる。そこで,理論の前提を現実的なものにすることを主張する歴史学派は,性急な一般化を批判し,忍耐強い事実調査を擁護することになった。そのため,経済学はいまだ演繹を行う段階にはなく,まず行うべきなのは,それに先立つ帰納的研究である,という主張を行うことになったのである。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2010 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] J.S.ミルと歴史学派2010

    • 著者名/発表者名
      佐々木憲介
    • 雑誌名

      経済学研究(北海道大学)

      巻: 60 ページ: 241-253

  • [図書] イギリス経済学における方法論の展開-演繹法と帰納法-2010

    • 著者名/発表者名
      只腰親和・佐々木憲介編著
    • 総ページ数
      391
    • 出版者
      昭和堂
  • [備考]

    • URL

      http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/44488

URL: 

公開日: 2012-07-19  

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