本研究は、成立期経済学と共和主義の関係をより明確にする長期的課題を念頭に、17世紀から18世紀後半にかけての共和主義思想自体の動態変化の把握の基礎として、17世紀共和主義思想が持つ宗教性の諸相を、ハリントンを中心に解明することであった。 上記の目的に従って、研究の初年度である20年度は、次の三つを課題とした。第一に、従来のハリントン研究においてその宗教性に関する議論の論点に関する網羅的把握であった。この作業はほぼ終えつつあるが、若干の調査を残しているので、次年度も継続したい。 第二に、ハリントンの諸著作を再度読了して、著作間の関係や、本研究で集中的に分析する『オシアナ共和国』とThe prerogative of popular governmentの議論の概要を今一度把握した。この作業によって、ハリントンの著作における宗教性の表明の基本構造が、穏健な国教会維持派の思想に近いことが再確認された。またハリントンの宗教性の特徴を、より明瞭に把握するために、同時代の共和主義思想家であり、かつ、無神論的思想の持ち主とされているマーチャモント・ニーダムの徳論の特徴を分析し、口頭で発表した(下記11に記載)。 第三に、関連文献や資料の購入は順調におこなうことが出来たが、英国ケンブリッジ大学図書館を中心とする英国での資料調査や英国の関連研修者との意見交換は、校務の関係でおこなうことが出来なかった。これは研究第二年度である次年度におこなうよう準備を進めている。国内研究者との意見交換は、各種学会の機会を捉えて、ほぼ予定したものを全て遂行した。
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