研究概要 |
平成二十一年度は、次の四つを課題として設定したが、それらをほぼ達成することができた。 第一に、ハリントンの宗教性に関する先行研究の再調査を継続しておこない、ハリントンの宗教性をめぐる論点を、確定することを課題とした。この成果は未発表であるが、概略として、ハリントンの宗教性は、セルデン・=グロティウスの宗教理解とほぼ同様の議論をおこなっていることが確認された。この結論は、2009年12月の口頭発表に部分的に反映された。 第二に、『オシアナ共和国』と『民衆政府の卓越性』とりわけ、そのbook II、を精読し、ハリントンの神観、人間と神の関係、聖書理解とそれがもつ聖書史上の意味を分析することによって、ハリントンの宗教性の基本的性格の把握を課題とした。この成果は、12月に口頭発表された。 第三に、英国での資料収集と国内外の関連研究者との意見交換を進めることを課題とした。7月開催のRepublican Exchanges (University of New Castle, UK)に参加し、ペルトーネン教授(ヘルシンキ大学)などを中心に、共和主義思想の概念規定や宗教性をめぐり、また、10月開催のPolitical Thought & Social Conflict in the Dutch context of war & maritime competition 1590-1750 (Rotterdam University, The Netherlands)にも参加し、オランダ共和主義との比較をめぐり、非常に有益な意見交換を行なった。さらに政治思想学会、日本西洋史学会、日本中世学会、日本イギリス哲学会などへの参加と意見交換をおこなうことができた。 第四に、前年度の研究成果の一部の論文化を課題としたが、「マーチャモント・ニーダムの共和政論の決疑論的性格」として公刊された。
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