研究概要 |
本研究の最終的な目的は「福祉国家理念の起源と現代性を確定する試み」である。当初の予定通り、本年度も昨年に続き、LSEの教授であったライオネル・ロビンズ、学長であったウィリアム・ベヴァリッジ、ケンブリッジ大学の講師であったフレデリック・ラヴィントンに注目した。その中で、次のような成果が出た。(1)経済学史学会・全国大会にて、「日本におけるロビンズの導入過程-1930年代と1950年代-」を発表したこと(2009.5)。これは新厚生経済学の提唱者であるロビンズが、いかに戦間期日本の文脈に導入されたかを扱い、初めて日本の経済思想へ拡大した考察を行ったことになった。(2)第13回欧州経済学史学会ESHETにて、同上の英語版を改訂して発表したこと(2009.4)。(3)第14回欧州経済学史学会ESHETにて、「Frederic Lavington on Big Business」という発表をしたこと(2010.3)。ラヴィントンはケンブリッジ学派の一員だが、本研究で初めて注目され、資本主義を安定化させるにはどのような企業家行動が必要かという規範的な議論を抽出した。(4)国際セミナーCambridge, LSE, and the Foundations of the Welfare State : New Liberalism to Neo-liberalismを共同開催し、科研費テーマの国際交流を果たした。7名の海外招聘者と国内の研究者と、英語で議論を果たした(2010.3)。これは新しい介入的・社会的自由主義の歴史文脈を、ネオリベラリズムまで視野を広げて解釈しようという野心的な試みであった。(687)
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