福祉国家はどこから始まり、どこに行くのか-。本研究は次の二方向から、福祉国家理念の起源と現代性を確定する試みである。第1に、1880年代から1910年代にかけて、ベヴァリッジの先達たちが福祉国家の思想的基盤を固めていく方向である。第2に、1940年代から1960年代にかけて、ベヴァリッジ自身が福祉国家の強化・拡大を模索する方向である。 本研究は申請者のベヴァリッジ研究を核に据えたうえでその殻を破り、個人的自由の侵犯、経済的な非効率、共同体の不在、一国主義という福祉国家への批判に対し、真摯に回答することを目的とする。その過程で、個別思想を越えた「福祉に関する時代精神・観念」が摘出される。
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