研究概要 |
兵庫県立大学所蔵「ヒックス文庫」に含まれる、以下の未公刊自筆草稿を解読者に依頼し、判読可能な状態にした。No.2152,No.2159,No.2160,No.2161,No.2163,No.2164,No.2165,No.2166,No.2168,No.2169,No.2170,No.2173,No.2176,No.2180,No.2181,No.2183(上記および以下のNo.は「ヒックス文庫」における整理番号)。また並行して、解読の不要なtyped manuscript(No.2151など)の内容を検討した。自筆草稿は年度末に解読済原稿を受け取ったばかりの段階であり、内容の検討は次年度以降となる。またtyped manuscriptは対象が大部であり、今年度中には完全な考察まで到達できなかった。以下は、次年度以降の分析にあたっての認識(途中経過)である。(1)No.2151(The Real Product. A Revision of "Welfare Economics," original typed draft for unpublishcd book)はHicks(1956)の続編として計画された厚生経済学に関ずる書物の草稿であり、Hicks(1975)や一連のindex number theoryに関係する論文(Hicks(1940),Hicks(1958),Hicks(1981)など)とオーバーラップする部分が多く(同一の箇所も多く)、ヒックスの厚生経済学体系を考える重要な資料であると思われる。(2)No.2152(Welfare Economics Lecture I,II,III,IV,manuscript in blue and red ink,11pages)は、1960年代初頭と思われる時期に、ヒックスが自らのHicks(1940)などの論文に端を発する、それまでの厚生経済学に関する論争を振り返って行った講義の草稿である。ヒックスが自身の厚生経済学関連論文の真意を語ったものであるという意味で価値が高いと思われる。
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