研究概要 |
兵庫県立大学所蔵「ヒックス文庫」に含まれる自筆草稿について、前年度までに終了しなかった分の解読を解読者に依頼し判読可能な状態にした。これにより、経済理論に関係するピックス自筆草稿の解読はほぼすべて終了した。また並行して、解読の不要なtyped manuscriptについても、今後のreproduce論文の作成を視野に入れ、ほぼすべてを業者に依頼しテキスト化した。 現在、それら解読、テキスト化された資料を精査しつつ、いくつかの論点に関する、複数の論文およびディスカッションペーパーを執筆中である。明らかになったものから順に公刊していきたいと考えているが、対象としている資料は大部であり、そのすべてを精査するにはもう少し時間が必要である。以下は、その途中経過としての到達点の要約である:ピックスの厚生経済学に対する態度の変化を示す資料として最も網羅的なものは、No.2151 The Real Product.A Revision of "Welfare Economics "(original typed draft for unpublished book)であるように思われる。Hicks(1956)の続編として計画された厚生経済学に関する書物の草稿であり、森嶋通夫の記述によれば、1950年代中盤に何人かの研究者にディスカッションペーパーの形で配布・回覧していたようである。Hicks(1975)や一連のindex number theoryに関係する論文(Hicks(1940),Hicks(1958),Hicks(1981)など)とオーバーラップする部分も多い(同一の箇所も多い)。また同じくヒックス文庫に含まれる、No.2152 Welfare Economics Lecture I,II,III,IV (manuscript in blue and red ink,11 pages)、No.2156 The Cost Measure of the Social Product (original typescript 71 leaves+3 leaves of diagrams in manuscript)、No.2157 Another Shot at Welfare Economics.Lecture I,Lecture II (typescript,19 pages folio+21 pages folio,diagrams in the text)もほぼ同一のテーマを扱っている。
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