(1)大標本特性の導出 まずN(クロスセクション方向のデータ数)が有限の場合に適用可能なパネル単位根の検定方法を考察した。具体的にはToda=Yamamoto(1995)のラグ変数追加法(Lag Augmented (LA) Method)に基づく検定方法を取り扱った。そしてNが有限で、T(時系列方向のデータ数)のみが大きくなる場合について、検定統計量の漸近特性を理論的に導いた。 (2)モンテ・カルロ実験による検定統計量の小標本特性の検証 モンテ・カルロ実験の結果、我々が考察した単位根検定の方法は、小標本において、(1)検定のサイズに歪みがあり、また(2)検出力が弱いことが分かった。なお時系列分析の経験から検定統計量の小標本特性が期待通りの結果を示さないことは、しばしば起こることが知られている。 (3)小標本特性の改善についての若干の試み 上記の弱点を克服するために、改善について若干の試みを行った。たとえば、Nabeya(1989)の結果にもとづく検定統計量の修正等である。これらの試みは部分的には成功したが、まだ十分とはいえず、より実用的な改善方法の提案は次年度の課題となる。
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