平成20年度は、HMB (Hicks-Moorsteen-Bjurek)生産性指数に環境負荷要因としての負のアウトプットを導入し、生産性要因分解分析の方法について理論的な検討を行った。この結果、生産性変化率の要因分解として、技術進歩要因、規模効果要因、効率性要因に加え、負のアウトプット要因を含めて分析することが可能になった。さらに、負のアウトプット要因の生産性に対する影響は、負のアウトプットの数量変化と負のアウトプット1単位あたりの生産性変化の積に分解でき、技術進歩によって環境負荷制約が軽減される様子を定量的に評価できる。 データの整備は、わが国都道府県別の距離関数の推定に必要なインプット(資本、労働)と通常のアウトプットとしての実質GDP、および負のアウトプットとしての一般廃棄物、また電気事業者の距離関数の推定に必要なインプット(資本、労働、燃料)と通常のアウトプットとしての発電電力量、負のアウトプットとしての集計環境負荷指標を中心に行った。 距離関数の推定については、最尤法による確率フロンティア関数の推定プログラムと、DEAによる計測のための線形計画法のアプリケーションを整備した。 これらの作業のうち、予備的な分析結果の一部について、6月にニューヨークで開催されたNorth American Productivity Workshop 2008と、7月に台北で開催されたAsia-Pacific Productivity Conference 2008、および1月に大阪で開催されたDEA Symposium 2009で研究報告として口頭発表した。
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