平成21年度は環境フロンティアを計測するための距離関数モデルを用いた分析について、新しい方法を開発した。この方法を用いれば、非効率(生産フロンティアからの乖離)を許容しながら規模の経済性と範囲の経済性をテストすることができる。この結果については、2009年6月にピサ大学(イタリア)で開催された欧州生産性及び効率性分析ワークショップで報告した。 また、わが国9電気事業者について、環境フロンティアを計測するために必要な環境負荷物質排出量のデータベースを整備した。予備的な作業として、火力発電部門(1981-2007年)を対象に負のアウトプットを含まない距離関数モデルを推定し、燃料生産性(発電電力量/燃料消費量)を計測した。環境負荷物質の排出量は燃料消費量にほぼ比例するとみなされることから、燃料生産性は環境効率の近似指標になっているといえる。さらに、推定された距離関数モデルに基づき、燃料生産性の要因分解分析を行った。すなわち、燃料生産性を、要素代替、技術進歩バイアス、効率性変化、規模の経済性、非ホモセティシティの諸要因に分解した。その結果、最近の燃料生産性の向上は、燃料価格の上昇に伴う要素代替の効果と共に効率性の向上が貢献しており、2000年以降実施されてきた段階的な規制緩和と競争導入の政策的効果が現れている可能性が示唆される。
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