研究概要 |
本年度は前年度までの作業で開発した分析法を用い、日本の電気事業の火力発電部門(9電力会社,1981-2007年)について環境負荷要因を考慮した生産性分析を行った。このため、火力発電の発電電力量を正のアウトプット、環境負荷要因であるSO_2,NO_x,CO_2を負のアウトプットとみなし、所与のインプット(資本,労働,燃料)から生産される両者の技術的関係(エコ生産フロンティア)を、トランスログ型アウトプット距離関数として定式化して推定した。この推定結果に基づいて得られたHicks-Moorsteen-Bjurekタイプの生産性指数を、技術進歩要因、効率性要因、規模要因と環境負荷要因に分解し、環境負荷を調整した新たなパフォーマンス指標としての純全要素生産性を計測した。その結果、これまで生産性分析で明示的に考慮されてこなかった環境負荷要因が、生産性に無視できない影響を及ぼしていることが明らかになった。 また、エコ生産フロンティアの適用可能な分析の範囲を拡げるため、前年度までの研究で距離関数を用いた範囲の経済性の分析法を開発した。本年度においては、この方法を高等教育(日本の1999年と2004年における218私立大学)における教育と研究の間の範囲の経済性の分析に適用し、両者の間に範囲の経済性が存在することを明らかにした。この結果、エコ生産フロンティアを用いて、規模の経済性や範囲の経済性と環境負荷要因の間の関係を定量的に分析することが可能となった。
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