平成21年度の研究成果としては、当初の分析目的の一つであった「非定常パネル時系列分析において用いられている各種の推定・検定方法を実際のデータ(ユーロ地域や発展途上国等)に対して応用する」ことにより4編の研究論文を査読つき学術誌に出版することができた。得られた新たな知見は以下のとおりである。 (1)非定常パネル時系列分析の手法を1999年から2006年のユーロ地域の金利データに応用した結果、金利の期待仮説(expectations hypothesis)が成立することが示された。この結果は、この地域における財政規律が有効に機能していることを間接的に示している。 (2)非定常パネル時系列分析の手法を1980年から2004年の最貧国(least developed countries)のデータに応用し、これらの国々の輸出関数の分析を行った。その結果、輸出関数は安定的であることが示され、価格弾力性は-0.24から-0.34、所得弾力性は1.36から1.79の範囲で得られた。 (3)非定常パネル時系列分析の手法を1965年から2004年の最貧国のデータに応用し、これらの国々の輸入関数の分析を行った。その結果、輸入関数は安定的であることが示され、価格弾力性は-0.72から-0.75、所得弾力性は1.26から1.69の範囲で得られた。 (4)1980年から2007年の中国の省別パネルデータを用いて、国内資本移動の分析を行った。その結果、1990年代には低調であった資本移動が1996年以降次第に増加してきたことが明らかとなった。
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