研究概要 |
「非定常パネル時系列データの計量分析」は、近年、急速な展開がみられる研究分野の一つであり、時系列的に得られる標本のサイズが小さい場合には有効な計量分析手法の一つである。本プロジェクトは、主として、次の2点を研究目的としている。(1)非定常パネル時系列分析において用いられる各種の推定・検定方法を実際のデータ(ユーロ地域や発展途上国)に応用し、従来の分析で得られた結果との比較検討を行い、その経済学的な含意について考察する。(2)非定常パネル時系列分析において用いられる各種の推定・検定方法の小標本特性について、分析を行う。 今年度は、その中でも特に、非定常パネル時系列分析を行うための推定・検定手法の統計学的妥当性に関して、モンテカルロ実験等を通じて分析を行った。その結果、本年度に得られた新たな知見は、以下の通りにまとめることができる。 Pesaran (Pesaran M.H. (2007) "A Simple Panel Unit Root Test in the Presence of Cross-Section Dependence" Journal of Applied Econometrics 22, 265-312.) によって提唱されたCIPS検定に関して、小標本において不均一分散の検定のサイズに与える影響をモンテカルロ実験によって分析した。その結果、(i) idiosyncratic errorに関する無条件の不均一分散の存在はCIPS検定のサイズに対してunder-size distortionの効果を持つが、その条件付き分散不均一性の存在は、CIPS検定のサイズに対してover-size distortionの効果を持つことが明らかとなった。
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