計量経済学の分野において、近年急速な展開が見られる分野の一つに本研究課題である、「非定常パネル時系列データの計量分析」がある。これは、従来の非定常時系列分析をパネル分析の枠組みに拡張しようとするものである。従来の非定常時系列分析においては、標本のサイズが小さいときに検定の検出力が弱いことが知られている。しかし、実際の経済データにおいては、十分に長い時間にわたる時系列データを入手することが困難なことが多く、その結果、信頼できる計量分析を行うことが難しいことが多い。これは、とりわけ、発展途上国の経済分析を行う場合には、顕著である。そこで、時系列データとクロスセクションのデータとを組み合わせることによってパネルデータに基づく分析を行うというものである。しかし、この研究分野にはまだ多くの発展の可能性が残されている。そこで、本研究課題では、この問題を理論的および実証的に分析することを目的とする 特に、次の2点を主たる分析対象としたい (1)非定常パネル時系列分析において用いられている、各種の推定・検定方法の小標本特性について分析を行う。 (2)非定常時パネル系列分析において用いられている、各種の推定・検定方法を実際のデータに応用し、従来の分析で得られた結果との比較検討を行い、その経済的な含意について考察する。
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