研究概要 |
本研究は,家族の中でどのように資源が分配されているのか、また、親から子へどのような経路で資源が継承されているのか、実証的に明らかにすることを研究目標としている。本年度はまず、教育投資による格差継承分析に関して実証分析結果をまとめた論文について改訂作業を行い、GCOE-GLOPEII Working Paper SeriesNo.40「教育と世代間所得連関の実証分析」にまとめた。さらに査読付き専門誌に投稿を行い、評価を受けて追加の改訂作業を行っている。 また、世代間所得格差の継承に関して、アジアではシンガポール以外の国については推計が行われていないことから、日本との比較の視点から韓国と台湾に関しても同様の分析を行っている。韓国については、実証分析結果をGCOE-GLOPEII Working Paper Series No.42、"Intergenerational Mobility of Earnings and Income in South Korea"にまとめた。さらに査読付き専門誌に投稿準備中である。台湾については本学助手の孫豊葉氏と共同研究として同様の分析を行うためのデータ整理を行っている。 さらに本年は親世帯から子世帯への金銭的・物質的な援助の家計の経済状況に対する影響の分析を行った。親の援助の要因分析では、子世帯の所得が低い場合、子供が幼い場合、また親と同居している場合に、親からの家計援助がある確率が高くなることが示されている。親の所得階層の影響は明確ではない。これらの親の援助は、必ずしも子世帯の家計に貢献していない。むしろ、消費水準や貯蓄水準の低いような子世帯に対して援助がなされている可能性が疑われる。これらの結果から、親世帯から子世帯への援助は所得格差の継承よりも所得再分配の傾向にあることが示唆されている。
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