平成20年度は、わが国の大学を取り巻く環境について検討をするとともに、わが国の国立大学と私立大学について、データベースを構築した。国立大学については、毎年秋に公表される国立大学法人の財務諸表などに基づいて、全国90の国立大学法人と大学共同利用機関法人を対象に収集した。主なデータの項目は、ストックデータとして有形固定資産額のうち土地や建物、図書などの資産額、またフローデータとして診療経費、役員人件費、非常勤教員給与、教員人件費、非常勤職員給与、職員人件費、経常費用合計、付属病院収益、学部学生数、修士課程学生数、博士課程学生数などである。他方、わが国の私立大学についても、東洋経済の大学四季報に基づいて、全国102校の私立大学を対象に収集した。主なデータの項目は、ストックデータとして有形固定資産額のうち土地や建物、有価証券、現預金、総資産、負債、またフローデータとして学生納付金、寄付金、補助金、資産収入、事業収入、消費収入、人件費、管理経費、借入金利息、病院経費、経常収支、学生数、教員数、職員数などである。 こうしたデータベースを作成し、そのデータを短い期間ではあるが時系列で考察したり、大学間の比較考察などを行った。また、データの背景にある国立大学と私立大学の会計制度の比較検討もあわせて行った。これらの考察から、わが国の国立大学や私立大学のような高等教育の市場について、産業組織論的なアプローチにより経済学的に考察することが今後の高等教育政策を考えるうえで有益であるという結論を暫定的に得た。
|