第1に、男女雇用機会均等法が女性の就業にどのように影響を与えたかについて、1987年から2007年(5年刻み)のデータを用いて実証的に検証した(Yukiko Abe"The Equal Emplo yment Opportunity Law and labor force bellavior of men and women in Japan."という論文にまとめられている)。主な結果は以下のとおりである。均等法以降に学校を卒業し労働市場に入職した世代(均等法世代)について、30歳代までの大卒女性の正規雇用就業は増えたものの、40歳代での正規雇用就業率(人口に占める正規雇用就業者の割合)は均等法施行以前に労働市場に入職した世代と大きくは変わらない。また、中卒・高卒・短大卒女性の正規雇用就業は、均等法以降に増加してはいない。配偶関係別にみると、均等松世代の正規雇用が増加しているという傾向は大卒女性についてもほとんどみられない。男女雇用機会均等法が最初に施行されてからすでに20年以上が経過しているが、この制度変更の長期的な影響を検証した実証研究はあまり存在しない。この研究は、1987年から2007年という長い期間の比較を学歴別に行っている点に特徴がある。 第2に、1990年代における賃金上昇の地域差について考察し、それが地域別の就業率の変化とどのようにかかわっていたのかを、中卒および高卒の男女について実証的に検証した(Yukiko Abe and Keiko Tamada "Regional patterns of employment changes in Japan : Evidence from the1990s"という論文にまとめられている)。若年層の中卒については就業率が都市よりも地方でより大幅に低下していた。一方、壮年層については、就業率は都市部で上昇幅が低く、地方部で上昇幅が高かった。このように、年齢層にようて就業率の変化の方向が異なることを、この研究では"Age twist"と呼び、それと賃金変化とのかかわりを考察している。
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