研究概要 |
本研究の平成21年度の主な研究成果は以下のとおりである。第1に、103万円の壁と有配偶女性の所得格差の関連を、全国消費実態調査のミクロデータを用いて実証的に分析した研究論文を公刊した(Abe and Oishi,"The 1.03 million yen ceiling and earnings inequality among married women in Japan."Economics Bulletin, 2009)。その論文では、1993年から2003年の間にかけて、有配偶女性のうちの無業者の割合が低下し、年間103万円以下の収入を稼ぐ女性が増えたため、結果として有配偶女性の所得分配は平等化したことを示した。 第2に,男女間賃金格差が、世代間でどのように推移してきたのかを、1975年から2005年にかけての賃金構造基本統計調査の公表集計データを用いて検証した論文を公刊した(Abe,"Equal Employment Opportunity Law and the gender wage gap in Japan : A cohort analysis."Journal of Asian Economics, 2010)。そこでは、男女雇用機会均等法が施行されて以降、大卒(大学院卒を含む)女性の正規雇用就業が40歳以下の年齢層で増加したものの、同年代の大卒男性と比較した正規雇用者の男女間賃金格差は縮小していないこと、大卒以外の女性の正規雇用就業は増えていないものの同学歴・同年代の男性労働者と比較した男女間賃金格差は縮小していることなどを示した。 第3に、東京都に居住する女性には正規雇用就業者が多いのに対し、埼玉県・千葉県・神奈川県に居住する女性にはパート雇用者がより多いという実証的事実を説明する理論モデルを構築し、論文にまとめた。
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