22年度は、近年、国際的にも注目が集まっている国境を越える寄附税制について、EUにおける最新の議論や研究等を基に検討を行った。 日本においては、国境を越える寄附をどのように扱うべきか、租税論による理論的検討が行われてきた。その際の論点は、外国NPO法人の扱いと寄附税制の国際的協調に関する理論的根拠であった。現行の法の下では、外国で活動や寄付募集をしようとするNGOは、その国に子団体等を設立して内国法人の資格を取得するか、二国間租税条約を結び、相互主義の観点から内国法人と同等の扱いを受けるかのいずれかしかないと言われてきた。こうした現状に対して、増井良啓は、外国NPOについても、認定NPOと同じように、認定を条件として寄付控除の対象にしてはどうかと述べている。 しかし、近年、ヨーロッパでは、海外で設立されたNPOへの寄付に対して、寄付金控除を認める動きが出てきた。それは、二国間条約や多国間条約に基づいて行われているわけではない。例えば、オランダでは、日本も含めて外国で設立されたNPOでも、オランダの基準を満たせばNPOとして登録でき、登録された外国NPOへの寄付に対して、寄付金控除が認められるようになった。この外国NPOは、オランダに子団体を設立する必要はない。 かかるオランダの事例は、どのように理論化できるのか、世界遺産等の国際公共財への寄附をどのように扱うべきか財政連邦主義やグローバル・タックスの観点から検討した。
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