最終目標である「法人企業統計季報」の個表を活用した検討課題の詳細な分析の準備として、個表データの準備と予備作業を進めると同時に、前段階として、金融危機下における中小企業金融、とりわけ中小企業向けの金融機関の「貸し渋り」および政府の対応策に焦点を合わせて検討した。個表データを用いた本格的作業は平成22年度に実施する計画である。 平成21年度は、中小企業向け金融機関「貸し渋り」対策として、1998年度第3四半期から2年半にわたり30兆円規模で上乗せ実施された特別信用保証に焦点を合わせて、現在の中小企業政策の主柱の1つである信用保証制度の有効性・効率性と国民経済的望ましさについて検討した。政策の具体的内容、その実施主体や責任分担関係などに関する情報も必ずしも明らかではない状況下で、実質2兆円の財政資金を投入して実施された特別信用保証に焦点を合わせてその実態を明らかにし、政策の望ましさを評価した。政策システムに根本的欠陥があることにとどまらず、政策の必要性と政策手段の有効性などの点から、この政策が有効に機能しないのみならず、本来的に不要であり、速やかに廃止することが望ましいとする結論を導いた。実施すべき適切な評価も行われず、長期間にわたって壮大な規模の無駄が垂れ流されてきた。 幸運にも恵まれて収集が容易でない各方面に関わる各種関連資料も利用可能になったから、今後の研究や政策論議・評価の基本資料として有用であると同時に、世界に冠たる中小企業政策大国である日本の中小企業政策全般の見直しの契機にもなるはずである。
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