研究概要 |
科学研究費交付期間内の研究目標は、(1) 経済学的観点から、労働時間の長期化の選択と格差拡大、労働時間と労働者数とのトレード・オフの関係を解明し、(2) 『職業安定業務統計』(厚生労働省)や『労働力調査』(総務省)のデータ等を使用して失業率に関する実証分析(マッチング関数の推定)から地域間での就職確率の違いを検証し、(3) 労災発生件数(率)と失業率の相関性と雇用政策の影響について考察することである。「労働時間」「失業」「安全衛生」は労働政策立案者が取り組まなければいけない最重要な課題であり、雇用政策面でも注目されている。それ故にこれらの研究に取り組む意義は大きいと考える。特に、労働環境の安全性についてはこれまで労働経済学者はあまり取り組んでいなかった分野であり、特に研究意義があると考える。 本年度の成果としては工藤准教授(北海道大学)との共同論文"Employment and Hours of Work"を改訂し、European Economic Reviewに再投稿した。現在審査中である。小原准教授(大阪大)と町北研究員(ジェトロ・アジア研究所)の共著『雇用保険のマイクロデータを用いた再就職行動に関する実証研究』をもとに海外学術雑誌に掲載を目指して論文を執筆中である(Are longer unemployment durations rewarded by longer job tenures?)。この論文は関西労働研究会や日本大学のセミナーで報告された。安全衛生に関する論文(Unemployment and Work Safety in a Search and Matching Model)は国際学会(FESAM, EALE Annual Meeting)報告で受けたコメントをもとに書き直し、来年度には海外学術雑誌の投稿する予定である。
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