研究概要 |
本年度は、第1に昨年度の学会報告論文を加筆修正し、論文を公刊した。(柳川隆・播磨谷浩三・岡村薫「並行在来線鉄道会社の効率性の計測」『公益事業研究』)。ここでは、整備新幹線の開業に伴ってJRから分離、設立された並行在来線第三セクター鉄道会社の経営の問題について、距離関数をベースとする確率的フロンティアモデルから計測した効率性の指標から検証を行った。第三セクター鉄道に地方鉄道を含むサンプルを対象とし、経営形態別の比較や、並行在来線各社の効率性の違いをもたらす背景について検証を行った。分析の結果、第三セクター鉄道は地方鉄道よりも相対的に非効率的であり、産出不足を反映する効率性の指標の方が、投入過剰を反映する指標よりも相対的に大きいことが確かめられた。しかしながら、個々の並行在来線鉄道会社の効率性は、その水準や年度毎の変動が必ずしも一様ではなく、普遍的な特性は認められなかった。これらの背景として、各社の設立後の沿革や上限分離の採用などの経営特性の違いから解釈を行った。 第2に、パリ第1大学のワークショップにて下記の研究報告を行った。(柳川隆・播磨谷浩三・吉野一郎"Evaluation of the National Railway Reform in Japan"、2010年9月)。これはJR各社の規模の生産性や範囲の経済性についての研究であり、引き続き研究を継続中である。 また、平成21年度の繰越に係る研究を行い、下記の論文を公表した。詳細は、平成21年度の研究実績報告書に記載の通りである(柳川隆,吉野一郎,播磨谷浩三「自由化後のドイツ旅客鉄道市場への参入と参入障壁」、『国民経済雑誌』)。
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