本年度の研究実施計画では以下の点を課題として掲げていた。 1. 公共性・公共財に関する理論的研究を進める 2. 建築・景観規制と住宅価格の関連性についての理論的研究 3. 建築・景観規制の実態ならびに調査対象地域の市場動向等に関する実証的研究 1 については前年度までの研究成果をべースにしながら、美と都市空間形成との関係についての理論的考察を進めた。 2 については、街づくりや都市景観に関する価値形成について、計量分析を行い研究を進めた。 都市の総合的な魅力が懐妊期間を経たのちに生まれる状態をモデル化し、その種になる価値をセンチメンタル価値と定義した。そのセンチメンタル価値に見合う分の都市景観の保全を行うことにより、懐妊期間中であっても都市の魅力が磨かれる点を明らかにした。 3 については、建築景観規制に関する情報収集を行うとともに、市場の動向について統計資料などを用いながら調査分析を行っている。景観法に基づく条例の制定などが進んでおり、京都などでは一般の住宅地などをも包含した景観地区の設定が行われており、京都市の報告によれば地価の下落も他の京阪神地域と比較すると下落の割合が低く、景観規制に一定の資産価値維持の効果があることがわかった。
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