研究概要 |
本研究の当初計画では、(1)中国国家知的財産局に出願している日米企業の特許データを企業(出願者名または企業名)ごとに,出願時間,登録時間,特許クラス(IPC),優先権情報等の項目に整理し,特許出願の全貌,特徴を考察し,日米特許出顧の相違を比較分析することを行う;(2)海外事業活動基本調査等をはじめ,BEAのSurvey of U.S.Direct Investgent Abroad and the Balance of Payments Surveyの中国進出に関するデータを整理し,上記のデータに名寄せ作業を行い,日米企業の中国進出戦略と特許戦略を検証するためのデータベースを構築する;(3)日本企業本社および中国における子会社,そして,アメリカの多国籍企業のアジアまたは中国本部の数社をピックアップし,インタビューを行い,日米企業の中国進出戦略の変化及びそれに伴う特許戦略の進化を聞き取り調査する;(4)上記のデータ及び調査の結果に基づき,日米企業の中国における特許出願ブームの決定要因を進出戦略・特許戦略の進化という視点から実証的に比較分析するとしている。21年度では、計画(1)について、中国国家知的財産局から特許データを購入し、データ整理を行ったと同時に、ヨーロッパ特許庁がリーリスしたPATSTATも購入し、日本をはじめ、中国に出願している関係国のデータの整理も行った。こうしたことによって、優先権情報を把握することができ、22年度での日米企業の中国における特許出願戦略の比較研究を優先権の視点から分析することは可能となった。同時に、20年度に引き続き、21年度では、中国の特許制度の変遷や、日本を含め、諸外国の中国における出願に関する考察を行った。それによると、中国のWTOへの加盟や3回亘りの特許法改正によって、先進国並の法的整備は進んでいると同時に、日本企業がその制度を積極的に活用しようとする努力が見て取れる。研究成果の一部は「EUと東アジアにおける現実と可能性」(大学教育出版社)のうちの一章として公刊された。さらに、計画(2)と(4)について、中国における特許出願に関する日本親企業の戦略変化を実証的に検討した。それによると、中国の知財法整備の強化、特に2000年に行った中国特許法第2次改正をきっかけとして、日本企業の中国への出願の目的としては単なる特許権の保護のみならず、ロイヤリティの取得をはじめ、中国の技術取引市場への進出も視野に入れ始めたことを明らかにした。その成果の一部がHas Japanese Firms Changed?(マクミラン社)の第8章に収録された。23年度では、日米企業レベルの中国特許出願戦略の比較分析を行う予定であるが、アメリカの企業情報が厳しく保護されているために、中国におけるアメリカ企業の進出に関する企業レベルデータの入手は困難であることが分かった。それゆえ、当初の計画に対して少し変更を行った。中国における日本企業の出願戦略の変化の背景である日本企業本社の特許審査請求行動に変化があるかどうかを探った。その結果では、90年代後半から日本企業本社の特許審査請求をより早めに行うことになり、それは企業の特許戦略が以前の数から質にシフトすることや、ライセンス等から利益を得ようとする姿勢の変化で、特許の利権化の強化がより重視されているからと考えた。その成果の一部をEconopmics of Innovation and New Technologyに掲載することになりました。
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