まず、これまでのデータ分析を踏まえ、日本を中心としたアジア・太平洋地域とEUの用途別財の貿易の傾向・特徴を分析し、アジアおよびヨーロッパにおける生産システムの特徴を定義づけた。とりわけ、ASEAN諸国やアジアNIESと中東欧10カ国のアメリカやヨーロッパへの用途別財貿易構造を比較して、なかでも、最終消費財の輸出市場の変化に注目して、後者をEU域内指向の生産システム形成と定義した。 次に、金融危機を前後とした生産システムの変化の定性的特徴を確認した。危機前をアメリカ市場指向型生産システム、危機後を新興国市場指向生産システムと定義し、それぞれの階層構造の変化を指摘した。とりわけ、企業間の重層的階層構造の変化と経済危機後の変容について注目した。そして、、EMSの寡占化と資源メジャーの寡占化の変化、ブランド企業の外注化(なかでも、日本のブランド企業の戦略の変化)、そして、新興国企業のアップグレーディングの可能性、巨大新興国への生産の集積によるフルセット型生産システムの再構築の可能性について指摘した。 加えて、直接投資データや新聞や雑誌の記事により類推される国際的企業活動の傾向を導出し、生産システムと貿易構造との関連づけを行なった。特に、新興国市場指向生産システムへの変容が、貿易構造を変化させる可能性があることを指摘した。 また、企業関係であるバリューチェーンやネットワーク、それを包括する生産システム全体の概念を明確にし、階層構造、補完関係の定性的分析を行った。
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