研究概要 |
研究目的の1「個別店舗における新ブランドと既存ブランドの間の競合性の解明」に向けた準備として,報告「途中打ち切り回帰モデルのマーケティングデータへの適用」を,日本マーケティング・サイエンス学会第84回研究大会において行った。本研究では,途中打ち切り回帰モデル(トービットモデル)のマーケティングデータへの適用を検討した。途中打ち切りとみなせる例としては,細かな在庫管理単位(SKU)のPOSデータ(販売量がゼロとなる場合が多い)がある。報告では,被説明変数がゼロの下限を持つトービットモデルの有効性を検証するために,ゼロデータの占める割合が10%,30%,60%の3つのシミュレーションデータを用いて,線形回帰モデルとトービットモデルのベイズ推定と予測を行い,その結果を比較した。線形回帰モデルの推定にはフリーの統計解析環境Rのパッケージbayesmのルーチンを利用した。トービットモデルの推定は,Chib(1992)Journal of Econometricsよるデータ拡大法を使ったGibbsサンプリング方法に基づき,bayesmのルーチンを参考にした自作ルーチンを用いて行った。ゼロデータの比率が10%の場合には両モデルの推定および予測結果はほぼ同等であった。一方,ゼロデータの比率が30%や60%と多い場合にはトービットモデルの推定および予測結果の方が良好であった。従って,ゼロデータ比率が10%を大きく越える場合には,そのことを明示的に考慮したモデルを用いて分析することが望ましく,トービットモデルは選択肢の1つであると言える。今後は実データを用いて,このモデルの有効性の検証を行う予定である。
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