研究概要 |
1. 協同組合の資金調達に関する研究 一般に、協同組合は、株式会社などの資本家企業に比べて財務体質が弱いと言われている。この既定事実に関して、二つの研究論文を発表することができた。まず、"Sunk costs of capital and the form of enterprise : Investor-owned firms and worker-owned firms"(Annals of Public and Cooperative Economics, 2010)では、実物資本のサンク・コストの存在が、資本家企業の有利性を高める(協同組合の有利性を低める)ことを、理論的・実証的に示した。この結果を踏まえ、"Capital procurement of a consumer cooperative : Role of the membership market" (Economic Systems, 2010)では、消費者協同組合とその所有権市場であるメンバーシップ市場を考え、これらに基づく代替的経済システムの理論モデルを構築した。そこにおける主要な結論の一つとして、メンバーシップ市場が存在する下では、消費者協同組合は少なくとも投資家所有企業と同等の資金調達能力を持つことを示した。 2. 民間営利セクター、民間非営利セクターおよび公的セクターの比較に関する研究 昨年度に引き続き、企業の所有と経営の分離化における経営者から所有者への情報伝達に焦点を当て、形態の異なる事業体における資金調達と経済効率性の比較研究を行った。おおよそ1~2ヶ月に1回のペースで研究会を持ち、お互いの結果をつき合わせる形で議論を進めている。
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