研究概要 |
本研究は,企業・家計の多様性に着目した都市内構造の動態変化に関して研究を行うものである.従来の研究との差別化を図るために,できる限りの都市・不動産に関するぐイクロデータベースを構築し,分析を進めている.本年度は,最終年度に向けての研究成果を上げるための基礎的な研究を実施した.公刊されていないため,本報告書には記載できないものの,海外のJournalにおいて2本が採択され,2本が審査中である.第一のテーマである土地利用転換モデルの開発においては,1991年~2006年にかけての東京都区部の建物利用の変化を個別建物単位で観察するとともに,その土地利用転換に対して,経済的な用途転換によって得られる収益格差がどのような影響を与えているのかを理論・実証的に明らかにした.従来の先行研究が,集計データを用いたものであったり,単一時点での分析であったりしたのに対して,1991.1996.2001年のマイクロ・パネルデータを用いた分析であった点が特徴的である.同研究は,近くJournal of Property Investment & finance, Vol.28,No.4.に公刊される予定である.同研究を発展させて,1991.1996.2001.2006年の4時点に拡張するとともに,より一般的なモデルの開発を行うことが次の課題であり,現在進めているところである(European Real Estate Societyにて2010年6月に報告予定(イタリア・ミラノ)).第二のテーマは,家計の個別特性に応じた住宅立地及び価格決定メカニズムの解明である.本年度においては,基礎的な集計分析にとどまったが,データベースの構築を完了させることができた.第三のテーマが、賃料の個別改定プロセスの研究である.従来の研究においては,価格指数として集計された形で観察されることがほとんどであったが,本研究では個別の部屋単位での賃料の改定確率と改定幅を分析した.同研究は,Journal of Japanese and International Economyに近く公刊予定である.最後に,オフィスの玉突き現象に関する研究である.ここではテナント立地の動学過程に注目している.帝国データバンクのマイクロデータベースの整備が終了しつつあり,同データを用いて分析を開始しようとしているところである.
|