本研究では、後発医薬品の需要と供給に関し、ミクロデータを用いた実証研究を行う。後発医薬品は、新薬の特許失効後に参入する医薬品で、新薬と同等の薬効であるが低価格なため、世界的な医療費削減の流れを受けその利用促進が世界各国で注目を集めている。一方で、後発品の使用増は新薬開発の誘因を低下させるため、どのような要因が後発品の選択に影響するか(需要サイド)、また、後発品企業の参入及び価格競争がどのように起るか(供給サイド)の理解は重要である。しかしながら、これらについて十分研究・理解されているとは言い難い。 本年度は、第一に、平成16-18年に初収載された後発品を対象に、後発品の参入数の決定要因を分析した。 分析結果から、先発品の売上高が参入数に最大の影響を与え、価格規制のない米国と同様の結果となった。一方、日本独自の価格規制や医療実態も参入数に影響し、例えば、医薬分業機関及び大病院での処方シェアの高い薬について参入数が少なくなる傾向が観察された。供給サイドの要因としては、有効成分あたりの剤型・容量が多い場合各市場への参入数が増加し、開発過程の範囲の経済が示唆された。これらの結果はJapanese Economic Review誌に掲載予定である。 第二に、先発品と後発品がどのような要因から選択されるのか、平成15年-平成17年の健保レセプトデータを用いた分析に着手した。1998年以降に後発品が参入した40品目を取り上げ、医療機関の属性(病床区分、医薬分業の有無、診療科など)、患者の属性(年齢、性別、保険種別)、医薬品の属性(薬価差、薬価差益差、急性疾患・慢性疾患の別など)が選択に及ぼす影響を分析した。今年度はこれらの基礎的分析を進め、学会及びセミナーで発表を行った。来年度以降、英文ジャーナルへの投稿を進めて行く予定である。
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