研究概要 |
本研究は、スピンオフ企業家の集中的発生(スピンオフ連鎖)、新産業集積の形成メカニズムについて、「業種別比較研究」「地域間比較研究」を通じて実証的に解明することを目的とする。 今年度(平成20年度)は、国内における新産業集積の地域間比較研究を行った。具体的には、浜松地域と札幌地域のソフトウェア集積(新産業集積)を事例研究の対象にして、その実態を比較分析した。研究の方法は、(1)地域の社会文化・支援制度、(2)産業構造(市場・技術)、(3)母体組織、(4)スピンオフ企業家(学習者)の4つの視点から、浜松地域と札幌地域のソフトウェア集積におけるスピンオフ連鎖の実態を分析した。中でも、(4)スピンオフ企業家(学習者)の視点からの分析には注力し、スピンオフ企業家のライフヒストリーに関する丹念なインタビューを行った。 当初研究計画のとおり、今年度は、1年目のプレ調査という位置づけであった。その意味では、上記のような「研究の方法」を確立できた意義は大きい。また、スピンオフ企業家(学習者)の視点から分析した結果、「地域におけるスピンオフ連鎖のメカニズム」の理論化にあたって、「実践共同体(Wenger,1998およびWenger et al.,2002)」という概念を活用する道を見出すこともできた。 来年度以降は、このように今年度に確立した「研究の方法」にもとづき、「業種別比較(既存産業と新産業の比較)研究」と「地域間(国内外)比較研究」を行い、より普遍的な新産業集積形成メカニズムを提示していけるよう鋭意努力したい。
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