研究概要 |
2012年度の研究で用いた同質的な発電企業n社による寡占状態の電力取引市場モデルは次の通りである. まず, ある1次関数を需要曲線として用いる. ただし, その傾きは負と仮定する. そして, 需要量の不確実変動を表現するため, その切片に確率変数を用いる. 次に, 各発電企業の限界費用関数としても1次関数を用いる. 需要量の不確実変動を生成する要因の確率分布を共通の情報として, 各発電企業は他の発電企業の戦略も考慮しながら市場へ提示する供給関数(戦略)を決定する. ただし, 市場へ提示する供給関数は限界費用関数の平行移動に限定する. さらに, 将来の利潤の確率分布のα-quantileを各発電企業の目的関数に用いる. 2011年度までには, この非協力ゲームにおいてNash均衡の存在とその一意性を示し, それを明示的に導出した. さらに, そのNash均衡におけるスポット価格式も導出した. 2012年度には, そのモデルを基礎とし, 電力スポット市場の価格と取引量という2次元の時系列データからAICを利用して、その市場で行使された市場支配力の程度の計測と, それを平均的な発電企業のリスクに対する態度と市場の集中度へ分解する方法を考案した. そして, その方法を用いて, California PX(1998年-2000年)のデータ(off peakとpeak)を分析した. その結果はBorenstein et al.(2002)とほぼ同じであった. すなわち, 市場支配力計測に関して本モデルのある程度の有効性が示されたと考えている. そこで, ここまでの結果を投稿論文としてまとめる作業を行った. なお, 本研究から派生した研究の成果(Shipping Freight Rateの分析と港湾間競争の分析)がTransportaion Research Part Eに採択された.
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