[研究目的]本研究は途上国の消費者市場に参入を考える多国籍企業がいかなる参入形態をとるのか、また、参入後どのような戦略をとるのかを理論的に分析することを主眼としている。消費者マーケットでの販売では、ホスト国内の流通チャネルの確保がカギを握っている。特に、流通チャネルをどのような形態で利用するか(水平統合的に活用するのか、それとも排他的取引契約を結ぶのか、また企業合併後に現地ブランドを併存して売るのかそれとも現地ブランドを統廃合するのかなど)は、ブランドの差別化の度合いやその他の様々な条件に依存すると考えられる。本研究では理論的にそれらの比較静学分析を行うことを目的とする。[研究方法」現在執筆中のうち一つの論文草稿である「ブランド戦略が市場参入形態に与える影響の分析」を海外共同研究者である香港城市大学助教授のChia-Hui Lu氏とともに雑誌投稿に向けてのスカイプと電子メールのやりとりで研究打ち合わせおよび草稿書き直しを進めた。2009年6月には香港にてアジア太平洋国際貿易学会が開かれたので、その学会での研究発表をおこなうとともに前後で共同研究者のLu氏と直接会って打ち合わせを行った。また9月の欧州貿易研究学会がローマで開かれたので、その学会において第3論文「クロスボーダーM&Aとブランド戦略」の研究発表を行い、海外研究者たちからフィードバックを受けた。さらには、10月にペンシルバニア州立大学で行われた中西部国際経済学学会においても研究発表を行った。これらの研究発表をもとにして論文草稿を学術雑誌に投稿できる完成度に高めるべく現在鋭意加筆修正継続中である。[研究成果]ブランド差別化が強い商品を扱う多国籍企業ほど、参入時には買収戦略をとることが多く、また、参入後には現地ブランドと別ブランドをたてることが多いという結論が得られた。
|