平成21年度の研究は労働市場政策と労働法制の最適な組み合わせに関する理論モデルの構築に研究の主眼を置いた。つまり、「労働者の権利を守り労働者を保護すること」と「労働市場の柔軟性・流動性を高めること」を同時に達成可能な労働市場政策と労働法制の最適な組み合わせに関する研究をおこなった。 具体的には、スウェーデン及びデンマークの労働市場政策及び労働法制に関する調査・研究をもとに、労働者保護、労働市場の柔軟性、労働市場政策、労働法制の関係を明示的に示した一般均衡理論モデルを構築し、労働市場政策と労働法制の最適な組み合わせを示した。 理論モデル構築に際して、理論モデルが現実の状況をより正確に説明し、モデルの設定が現実的な状況から乖離してしまわないために、平成20年度に行った関係省庁に対するスウェーデン、デンマークの北欧諸国でのヒアリング調査を平成21年度も再び行った。 加えて、国内外の学会で報告・参加し、最近の研究をフォローアップし、より現実的でかつ独創的な理論モデルの構築に努めた。理論モデルは「解雇法制と労働市場」という論文タイトルで2010年3月発刊の早稲田政治経済学雑誌に掲載されている。 理論モデルの帰結は、失業手当給付率が低ければ低いほど、また解雇規制が厳しければ厳しいほど、雇用量が大きくなり、結果として社会的厚生水準が最大となるというものである。つまり、理論モデルから導き出された結論は、厳しい解雇規制と低い失業手当という組み合わせが社会的厚生水準を最大にするというものであった。
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