前年度に着手した観光業界におけるツアー催行会社の取引契約構造の理論的分析について、旅行客市場と土産物販売業者の間での間接ネットワーク外部性を考慮したモデルを構築して、均衡分析および経済厚生分析を行った。その研究成果の一部を"Shopping Commission in Group Package Tourism: A Two-Sided Market Perspective"として国際学会において報告し、査読付きの学会報告集に掲載した。また、ハードウエアとソフトウエアからなるシステム製品市場における互換性の分析について、最近の研究成果の収集とその文献展望を行い、この分野での理論的な論点の整理と問題点の精査を進めた。この作業をふまえたうえで、次の2つの観点からの理論的検討を行った。1つ目は家庭用テレビゲーム市場を想定し、独占プラットフォーム企業による新規ハードウエアの後方互換(backward compatibility)・非互換の選択問題に関して、ソフトウエアの新バージョンをリリースする場合を考慮に入れたモデルを構築した。そのモデルを用いて研究代表者および研究協力者が均衡分析・経済厚生分析を行った結果を研究ノートとしてまとめた。2つ目は電子書籍のリーダー端末機器といった、複占プラットフォーム企業間における互換・非互換の戦略的意思決定について、多段階ゲームによるモデル分析が研究分担者によって進められた。その研究成果の一部は"Compatibility and Product Cyclein Two-Sided Markets"として国内ワークショップにおいて報告された。
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