今年度では、これまでに行ってきた東京大都市圏と大阪大都市圏の内生的経済成長に関する研究成果を生かしながら、地域経済発展に関する政策研究を幅広く行った。主な成果は次の通り。 まず、これまでの実証研究の結果を踏まえて、大都市圏地域における経済発展に資するための重要な経済政策をまとめてみた。具体的には、大都市圏地域の経済発展を実現するために、資本や労働といった生産要素の投入が重要であるが、知識のスピルオーバーなど動学的外部経済も不可欠であること。この知識のスピルオーバーを強化するには、域内の交通・通信ネットワークの整備が前提である。研究の中では、日本の大都市圏地域の経済成長の経験を参考に、中国の武漢地域経済の将来展望を行い、地域経済成長を実現するための政策を提言した。 次に、地域経済成長の結果として生じる地域間の格差について、戦後日本経済の経験を整理して、地域格差の原因などを分析した。それによると、戦後の日本経済は地域格差の拡大と縮小の繰り返しを経験した。また、こうした地域格差の変化は全国マクロ経済の動向と地域間の人口移動に密接に関連している。この経験を踏まえて、近年経済成長が著しい中国の地域格差の変化とその原因についても検討した。特に近年中国の地域格差には、高度成長期の日本と同様に、格差の縮小傾向が見られた。研究を通して、日本における地域経済発展の経験は中国経済にも大変参考になることを示した。
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