日本の港湾別の貿易統計を基盤として、港湾別貿易データベースと都道府県レベルの地域別の貿易データベースを構築した。この都道府県レベルの貿易データを用いて、さらに各県のextensive marginと二国間の産業内貿易を計測することが可能になった。これらの港湾別・地域別貿易データを用いて、次の三点の研究成果を挙げることが出来た。(1)港湾別の輸出価格を用いて、各港ごとの為替レートパススルーを計測した。分析の結果、細分類における同品目であっても、港ごとに価格設定が異なり、為替レートの変動に対して異なる反応を示すことを明らかにした。これは、従来の国ごと・産業ごとに為替レートパススルーが異なることを示してきた先行文献に新たな視点を提供した。(2)日本の都道府県別の輸出varietyの指標を計測してパネルデータを構築した。これまでの先行研究では、国レベルの輸出varietyは計測されることはあったが、国内地域レベルでのデータが提供されたのは世界でも初めてのことである。このことから、日本の国レベルの輸出varietyは地域レベルでも増加していることが示された。varietyの定義には議論の余地があるが、地域別の製品も異なる差別化された財であると考えると、日本の輸出varietyは非常に高いものとなる。(3)日本と韓国、日本と台湾における産業内貿易を都道府県別によって分析を行った。また、産業内貿易を説明する変数として輸出varietyの指標を用いた。この分析から、産業内貿易は国レベルだけでなく国内の一地域の視点からも非常に高いことが示された。このことは、アジア地域においては非常に密度の高い国際生産ネットワークが構築されていることを示す。また、輸出varietyの増加が産業内貿易の重要性を更に高めていることが明らかにされた。
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