輸出データの生産地域分解のためのデータベース化が初年度に完成したために、今年度は(1)港別・県別の輸出の単位価格(unit value)を用いた新たな実証分析、(2)国内に複数地域ある貿易理論モデルを構築して、地域別の輸出の(home-market effect)自国市場効果、の二つの新たな実証分析を行った。 第一の研究に関しては、為替レートの変化が地域別の輸出価格にどのような変化をもたらすかを示す為替レートパススルーの計測を行った。この分野への特に新たな貢献としては、各地域の輸出シェア(対全国)が為替レートパススルーに与える影響に着目したことである。この研究からは、地域別の輸出シェアが非線形的に為替レートパススルーへ有意に影響を与えることが示された。研究成果は、ディスカッションペーパーとして刊行して、学会においても研究発表おこなうことで研究の公表に取り組んだ。現在、最初の国際学術雑誌から棄却される際に有益なコメントを受けたので、別の国際学術雑誌に投稿をするために改訂中である。 第二の研究に関しては、広瀬恭子氏との共同研究として、国内地域を導入した貿易理論モデルに地域の非対称性を考慮した分析を行い、理論分析から導かれた仮説を輸出地域データベースを活用して検証を行った。理論分析からは二つの主要な仮説が導かれたが、特に二地域間の輸出比率が海外需要よりも国内需要により敏感に反応する自国市場効果に関しては、新しい仮説であり既存の研究では言及されていない。研究成果は、ディスカッションペーパーとして刊行して、学会においても研究発表おこなうことで研究の公表に取り組んだ。現在、国際学会などで更なる発表を重ね、有益なコメントを反映した改訂を行い、国際学術雑誌に投稿をする計画である。
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