A.データベースの作成 企業活動基本調査(経済産業省)の個票データと、マールM&Aデータベース(レコフ社)とのマッチングを行うことにより、非上場企業を含むM&Aに関するパネルデータベースを作成した。データベースの対象は、製造業と非製造業に属する企業の1994年度から2002年度までであり、1590社の合併が抽出された。変数としては、企業の基本情報(産業、総資産、企業年齢)、財務情報(営業利益率(対総資産比率、以下同様)、キャッシュフロー比率、経費比率、負債比率)を整備することに加え、生産性関連指標(産業内の相対的TFP水準、TFP上昇率、研究開発費比率)データも作成した。 これらの変数について、合併・買収企業(acquirer)、被合併・買収企業(target)、および比較対象企業(peer)のそれぞれにつき、合併前年および合併後3年間にわたるデータを整備した。比較対象企業の選定にあたっては、サンプルセレクション・バイアスを除去するため、企業活動基本調査の個票データを母集団とするPropensity Score Matchingを利用した。 B.M&Aと研究開発・生産性に関する理論分析 M&Aが市場価値に及ぼす影響について、理論的には、市場支配力の強化、シナジー効果、経営者への規律付け効果などが指摘されているが、これらと並んで潜在的に重要な影響として、研究開発や生産性、競争力への影響が挙げられる。特に研究開発については、同一産業内での重複投資を避けて効率的に研究開発を行うことがM&Aを行う動機の一つとなりうる。こうした動機について、理論・実証分析に関するサーベイをもとに、理論分析を行った。
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