A.理論仮説の提示 昨年度行ったサーベイに基づき、さらに理論分析を進め、企業合併が研究開発、TFP、収益率などの企業パフォーマンスに及ぼす影響に関する仮説として、コスト節約効果、シナジー効果、所得移転効果、経営改善効果などを提示するとともに、合併にかかわる企業の差異が経営のコントロール権を通じて企業パフォーマンスにどのような影響を与えるかを考察した。 B.実証分析 理論仮説を検証するため、昨年度構築したデータ・ベースを用い、まず、「どのような企業が合併を行うのか」に関し、ロジット・モデルに基づいて、合併企業になる企業はどのような特徴を持っているか分析を行った。次に、「合併により企業のパフォーマンスは改善されたか」に関しては、まず、比較対象として合併企業が合併を行わなかったが合併企業とよく似た特徴を持つ企業(コントロール・グループ)を先に推計したロジット・モデルの推計結果を利用したPropensity Score Matchingの手法を使って選び出した。そうした企業群との比較によってパフォーマンス変化をみるdifference-in-differences(DD)の手法を用いて、合併前と合併後のパフォーマンスの変化を製造業、非製造業に分けて計測した。また、合併・統合プロセスに光を当てるため、合併直後からのパフォーマンス変化についても計測を行った。さらに、企業合併の多様性を考慮するため、同一産業内か異なる産業間か、同一企業グループ内合併かそれ以外の合併か、などの観点からも分析を行った。
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