本研究の目的は、望ましい援助の理論的枠組と、アジアにおける日本の主要援助国のケース・スタディを通じ、「条件付、経済改革、援助効果」の三者と経済成長などの経済パフォーマンスとの関係を明らかにすることである。本研究においては、インド、インドネシア、ベトナム、フィリピンを比較し、開発援助がどのような理論的枠組みで行われ、その上で、中央政府・地方政府間の権限の配分に留意しつつ、世界銀行や日本などの開発援助がその政策を変更しうるか、という点について、特に、開発途上国の側のオーナーシップに留意しながら分析を行った。 すでに、開発援助の理論的枠組みについては、論文として、国際開発研究上に発表し、また、製造業のあり方と、ガバナンスや人的資本、そして開発援助の関係についても、クロスカントリー比較を行うことで状況を明らかにし、やはり国際開発研究上の論文として発表した。 本年は、これらの業績の上に、世銀の貧困削減支援借款(PRSC)評価などの公開された成果も使いつつ、途上国のオーナーシップ、援助がもたらしうる「政策変更」などについて、いっそうの考察をすすめてゆきたい。 昨年度において、インドについては、とくに、貧困削減の観点から、植林事業の政策変更について(Joint Forest Management)、援助とパフォーマンスの関係の分析を行ったが、これを継続し、経済パフォーマンスも、経済成長、貧困削減に限定せずに、より新しい問題である気候変動などの環境問題にも適用してゆきたい。
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