平成22年度においては、これまでの研究の成果を踏まえて国際開発学会や日本評価学会の開発、援助評価に関するセッションにおいて発表やコメントなどを行った。本研究においては研究の対象としていなかった、ASEANの後発国であるカンボジア、ラオス、ミヤンマーなどについては、まさしく、改革がこの10年間の間に進んできていることを考えれば、中国、インド、フィリピン、ベトナム、インドネシアなどのこの地域における改革の先進国についての知見がこれら諸国に適用可能であることが理解でき、今後は中国、インド、フィリピン、インドネシア、ベトナムにて得られた改革の政策をこれらの諸国に拡大し、どのような点が適用可能で、逆にどのような点は適用可能ではないかを十分検討する必要があることが認識された。また、ベトナムにおいて、本研究成果を踏まえて、セミナーやディスカッションを活用してベトナム政府に対しプレゼンテーションを行った。 リーマンショックによる経済危機の後には、本分析の対象となっていた、中国、インド、インドネシア、ベトナムは、エマージング経済として、世界経済の牽引車ともなってきている。これらの諸国に対しては、日本政府は近年「成長戦略」としてアジア諸国の成長を日本の成長に取り込むことをインフラ輸出などの政策として進めている。援助については、これら諸国の開発に加えて、PPPや日本企業の進出などをも推進する役割を与えられている。各国の改革政策がこの日本の援助政策とどのように補完可能となっているのか、また、逆に日本の援助政策がこれら諸国の改革へと負の影響を与えうることも検討する必要がある。このことを踏まえ、これまでの研究成果を活かすべく、データ収集、及び特に東アジア経済に与えるインパクトの把握につとめた。統計データについては、新たに、分析ソフトウエアを購入し、更なる計量経済分析を行った。特に、制度・ガバナンスと人的資本、そして製造業の発展が、これら地域の開発にどのような影響を与えるかについて、データの分析をすすめた。分析結果は、いずれワーキングペーパー等として発表する予定である。援助と製造業との関係についての分析結果については、きわめて初期的な論考を本研究において行ってきたが、改革との関係において、援助と製造業がどのような影響を与えうるかについてをさらに深めるべく、後続の科研費研究において、シンガポールや台湾も研究範囲として拡大し、また、きわめて現在的な課題として、ASEANや東アジアの経済統合の与える影響などへも視野を拡大してきている。
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