日本の国土の67%は森林である。それにも関わらず林業の経済効果は低い。先進林業地ではクラスター政策を通じて林業生産性とイノベーションを高め、林業における経済貢献を拡大させた。例えばスコットランドでは林業クラスターが設立された2000年以降、当地域の経済成長率は約2倍となり、林業界の利益率も増加した。この研究によってスコットランド林業のクラスター経営戦略とその7年間の実態を調査・分析し、持続可能性原理を林業イノベーションシステムに適用・発展させる取り組みを明らかにしつつある。その第1として、長野県とスコットランドの森林資源、林産業の構成と連結機能を比較・検討し、クラスターマップを作成した。第2に、スコットランドの伐採-流通-製材-製品のサプライチェーン・マネジメントの改善点と生産性向上に関する、当地の林産業クラスター関係者への面接および聞き取り調査をおこない、それに基づく論文を発表した。こうした研究成果は、林業政策、経済補助金制度、林業経営、加工・流通システム、建築デザイン、研究開発等の関連について徐々に明らかにしつつあり、長野県の林業・林産業の改善に向けて多くの示唆を得つつある。第3に、わが国における林野庁主導の'新生産システム'の導入について、スコットランドの林産業クラスターと比較・検討を行った。これは大分県の新生産システムを事例として取り上げ、新生産システムの課題と問題点を明らかにするとともに、加えて長野県での林産業クラスターの調査・分析を進めた。現在、これらの成果を整理しつつ、さらなる新生産モデル地域の調査・検討を行う予定である。これら国際クラスターの分析および国内の新たな林業活動を比較・検討することによって、今後の長野県および日本林業の再生の道筋について提示することが可能となると確信する。
|