モノ、カネ、ヒトの移動のなかで、これまで相対的に遅れていた人の移動が、世界経済のグローバリゼーションによって盛んになってきた。国際間の労働移動、特に高度な技術を持った人材の移動、留学生の増大などは、個人の効用最大化の観点から増大してきている。特に最近では、医療従事者の低開発国から先進国への国際移動が議論の対象になってきている。この問題は、従来は頭脳流出の問題として個人の観点から議論されてきたが、今日では国の政策として取り扱われるようになってきており、政策問題になってきている。この問題は規模が大きくなると、医療システムや財政問題にも影響してくるので、深刻な問題となる。さらに、人の移動の自由化は、これまでの伝統的なライフスタイルを大きく変えてきている。特に女性のライフスタイルは大きく変容し、未婚化・晩婚化、その結果として少子化現象が起こっている。このことは子育てや老親の介護問題にも関連している。本研究では、人の移動の自由化が個人の行動に与える影響、さらには家族あるいは社会レベルにどのような影響を与えたかを、現代経済学の観点から、理論的・実証的に明らかにしている。
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