本課題では、研究期間内全般にわたり動態的変化が著しく消費者に対する主要な市場の変遷が激しいメディア市場を対象に、衰退・融合・新規各市場において競争状況の特徴と差異を捉え、市場が移行する過程で伝統的市場の存在が新規市場に与える影響について考察することを主目的としている。研究2年目に当たる本年は、日本における新聞産業をとりあげ、伝統的市場において競争がどのように行われてきており、どう変化しつつあるかに関する示唆を得ることに焦点を当てた。前年に行った地上波放送市場と比較し、視聴者および広告という2つ収入源(=市場の二面性)を有すること、Umbrella Modelと呼ばれる地域・刊行周期等の別による「階層」ごとに異なる競争が展開されていると想定されること、が特徴となっている。先行研究と比較した本稿の貢献は、近年特に構造的と考えられる販売部数の落ち込みが観察される時期を選定し期間による変化をみること、パネル・データ利用によりデータ数を増加させ安定的な推計結果を得られること、その結果都市部と地域との相違を統計的に分析できること、Hausman検定により固定効果モデルを採用しより計量経済学の観点からより適切な推計を行えること、競合的な新興メディアとの関係を考慮できること、等である。なお本年度中に主要経済誌の中間決算が赤字を記録する等急激な変化が見られたことから、データの延長とSurvival分析など別角度からの分析を補完的に利用するなどして結果の頑健性を確認してから、最終年度に向けた結論をとりまとめることとしている。
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