本研究の目的は、EU諸国で実施されてきた気候政策を共通の指標に基づいて横断的に政策評価を行い、新たな政策評価研究の手法を提示することである。本年度は、1.エネルギー効率性に関するオランダの環境協定、2.欧州の物流モーダルシフト政策の政策評価の2事例について調査・分析を行った。 1.オランダの環境協定(ベンチマーキング協定、第2期長期省エネルギー協定)は次の特徴を有することが明らかとなった。第1に、協定参加企業は省エネ計画書の策定と提出が義務づけられ、毎年その結果を第三者機関に報告しなければならない。そして、モニタリングの結果が公表されることで、制度の透明性が一定確保されている。第2に、第三者機関は省エネ計画書の適切性を審査し、その結果を監査するだけではなく、企業に対して個別に対策や計画に助言を与えるという複合的な役割を担っている。また、企業が省エネ計画書に基づいて対策に取組でいない場合、第三者機関が助言などの支援を行うことで不履行を極力回避している。第3に、協定参加企業はエネルギー管理システムを運用すれば、支援的な措置を利用できるように工夫されている。 2.欧州では、増加するトラック物流を鉄道などへ転換するモーダルシフト政策が推進されているが、その中でも中心的な欧州横断運輸ネットワーク(TEN-T)の政策評価の実態と課題を明らかにした。とりわけ特徴的なのは、TEN-Tでは政策の効果や進捗状況について外部評価を受けている点である。政策評価では、経済性、環境影響、安全性など多角的な視点から詳細に評価が行われており、有益な指摘事項も多い。
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