本研究の目的は、EU諸国で実施されてきた気候政策を共通の指標に基づいて横断的に政策評価を行い、新たな政策評価研究の手法を提示することである。本年度は、1. ドイツでの再生可能エネルギー普及政策の実態、2. 欧州での環境政策の決定プロセスの2事例について調査・分析を行った。 1. ドイツの再生可能エネルギーの普及政策は次の特徴を有することが明らかとなった。第1に、再生可能エネルギー法(2000年)は2010年までの再生可能エネルギーの普及目標を2倍に引き上げて、その達成に向けて固定価格制度を導入した。当初は買取価格が変動していたが、その後、段階的な固定価格制に移行することで安定した価格設定につながり、加速的な再生可能エネルギーの普及につながった。第2に、2004年の改正法では逓減率が設定され、技術革新をはかることでコスト削減につながる工夫がされた。第3に、再生可能エネルギーの普及が進むにつれて新たな産業が創出されて、グリーン・ジョブが生み出された。 2. 欧州の環境政策は、多国間連合という特質から参加型民主主義に基づいて審議・決定される。まず、EU政府は、科学的な根拠に基づいた政策を提示しなければならないが、充実したシンクタンク機能がそれを支えている。また、環境情報へのアクセスが保障されており、NGOなど市民が政策に関与している点に特徴がある。このように、情報公開と市民参加の徹底した保障がEUの斬新的な環境政策がうみだされる源泉となっている。
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