本研究の目的は、EU諸国で実施されてきた気候政策を共通の指標に基づいて横断的に政策評価を行い、新たな政策評価研究の手法を提示することである。本年度は、1.ドイツでの再生可能エネルギー普及政策の実態、2.ドイツでの環境・雇用・福祉の政策統合の2事例について調査・分析を行った。 1.ドイツの再生可能エネルギー法(2000年)は、再生可能エネルギーの普及目標を2倍に引き上げ、その達成に向けて固定価格制度が導入され、買取価格が安定して全国で再生可能エネルギーの大幅な普及につながった。州政府や市・郡政府は、地元の学校や庁舎などに太陽光発電や風力発電機を設置し、民間レベルでの普及につなげ、雇用創出を生み出すグリーン・ジョブという環境と経済の両立が実現している。 2.ドイツの社会福祉団体カリタス(Caritas)フランクフルト支部は、フランクフルト市当局と共同で雇用・福祉と温暖化対策を連携させた省エネ診断士の育成事業を2006年から実施している。低所得者を対象とした無料の省エネ診断サービスは、環境改善(エネルギー消費の削減によるCO2排出削減)にとどまらず、福祉の向上(家庭での光熱費の削減)、雇用創出(省エネ診断士の職業訓練)、行政費用の削減(光熱水事業の行政への費用負担の削減)という4つの異なる成果を同時に実現した。とくに、この事業による環境改善と経済効果は、総費用に対して極めて大きく、新たな環境政策統合の事例として注目される。
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