本年度研究の中心はOECDやWHOの諸研究(health systemのperformance研究)を通じて、医療制度の機能に関する枠組みを明らかにすることである。医療制度を通じて提供されるサービスはその質と量を左右するのが医療制度の仕組みである。したがって、その仕組みに関わる理論的な解明は重要な課題である。 上記文献の検討たより、医療制度の特徴は各国で相違するものの、医療制度は資源配分と所得再分配を規定するものとして各国で共通する一定の機能を果たしている。しかし、医療制度では需給調整を行う価格が機能していないことから、価格の需給調整機能が作用せず、さらに価格の誘因機能も適切には働かない。このことから次のような問題が生じる。環境条件の変化に伴う医療サービスの需給調整、医療分野における非効率性の可能性、患者の医療サービスに対する期待やニーズに対応する誘因の希薄化、「政府の失敗」などの諸問題である。performanceの評価手法はそれらの問題を緩和させる方策の1つと見なすことができる。つまり、医療分野の調整機能を内部化させる仕組みとなる。 しかし、その手法を経済学的に有効にするためには、資源配分機能および所得分配機能の2つの側面からの展開が求められている。前者については非市場的調整機能を含む需給調整過程が、また後者については医療分野の政策目標となる公平性の問題が分析フレームワークの追究に際して考慮されなければならないだろう。
|