本年度は、中国モデルの捕捉とりわけ中国の経済および政治、そして中国の人々の行動を捉えることに主たる関心をおいて研究がすすめられた。そして分析対象を(1)経路依存性、中国開発モデルの(2)経済的側面および(3)政治的側面に合わせ、かつ(4)行動経済学ならびに行動ファイナンスの側面から先物市場における日中連携の可能性の検討にあてられた。 そして、「新制度論」の視点からみると、「経路依存」から脱却するためには、「内向性」から「外向性」への転換が不可欠であること、そして中国の経済モデル、政治モデルを検討してみると、「市場の失敗」と「政府の失敗」との複雑な関わりが観察されること、そして「権威主義開発体制」の変容のロジックが認められることがわかる。 そうした状況において、本年度の研究では、日本の先物市場との比較という視点から中国の先物市場(とりわけ上海先物市場)を分析し、次のような主張が可能であるように思われる。 すなわち、現状では、中日双方の市場とも、「開放性」が十分とはいえず「内向き」である。だが原因は異なる。中国は市場が未発達で国際的な資本移動に対応出来る体力を身につけるまでしばらく内向きである必要があり、日本は「投機性の高い」先物取引が回避される傾向が根強く存在し、やむを得ず内向きである。日中間の連携によって両国市場の「内向性」打破が期待出来る。長い先物取引の経験を持つ日本と先物取引を懸命に発展させようとする中国(おそらく多くの「潜在的適合者」が存在する)とは、互いに互いを必要とする関係にあり、そうした連携を強めることによって、互いの「教育」への示唆と「潜在的適合者」の発掘への手がかりを得、やがて大きな成果を生むことにつながっていくものと思われる。
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