本研究は、その視点を、基本的に、中国バブルおよびその対処策としての先物市場の機能を考慮に入れながら、そうした現象の発生と経緯をたどり、社会主義市場経済という「体制」の中国を分析してみることに合わせて行われた。本研究をつうじて明らかになったことは、(1)中国が「現代国家」をめざして挑戦を行っているという実態であり、(2)中国の体制移行と発展について、(その具体的内容としての)「内的発展モデル」という枠組みに照らして、経緯と現状ならびに展望を試みる必要があるということであった。具体的な事例として、「上海バブル」に焦点をあててみれば明らかなように、その発生の基本には、対内的に、中央地方関係が存在しており、かつその評価基準の歪みが存在している。また、対外的には、(とりわけ米国との間の)貿易収支の不均衡および(文化や政治を含んだ)摩擦の発生が存在している。そうした現状のもとで顕在化している現代中国のバブル現象に対しては、必ずしも十全な機能を備えているとはいえない(中国における)先物市場によって適切に対処し得るとは、現在のところ、考え難い。中国の資本市場に対する適切な政策および、中国が、「現代国家」へと発展を遂げかつ(集約型成長ならびに成長の共有を実現するという意味での)「内的発展モデル」にしたがって政治経済のメカニズムが働くことを前提とし、そして日本の「摩擦」と「バブル」の教訓を十分に活かすことによって、中国バブルに対応することが可能となるものと思われる。
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